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第2章 保険外交員　水瀬祐希

祐希「20倍の保障となりますと、単純にご費用も20倍近くのになってしまうのですが・・・」

20倍という突拍子もない木原の言葉に水瀬祐希は木原の表情を伺いながら答えた。

木原「実はここだけの話、親から生前贈与でまとまった金が入りましてね。将来に備えて保険は手厚くしておきたいと思っていまして」

祐希「そういうことでございましたか・・・」

彼女は一瞬逡巡するように手元の手帳を見つめる。
金額を頭の中で計算しているのかもしれない。
単純に20倍となると月額40万円を超える計算だ。

祐希「ありがとうございます。それでは改めて御見積書の方作成してきます。」

心なしか彼女の声質がワントーン上がったような気がした。

水瀬祐希はまだ一杯残っているコーヒーを一口啜ると、手帳を閉じて微笑みながら話し始めた。

相変わらず上品で美しい顔だ。

祐希「木原さんはなにかご趣味などあられるのですか？」

最近高級ソープに行くのにハマっているなど言えるわけもなく、

木原「うーん、趣味と言えるものはないけど旅行は好きですね」

祐希「旅行いいですね。私も好きです。最近はどちらに行かれましたか？」

実のところそれほど頻繁に旅行など行っていなかった。
一緒に行くような彼女もいないし、1番最近行ったのは大学時代の独身の友人たちと行った北海道旅行だが１年以上遡る。

祐希「北海道いいですね。私まだ行ったことないです。やはり海鮮が美味しいですか？」

お互いのコーヒーがなくなるまで、世間話が続いた。
仕事のためのトークだとわかっているが、これほどの美人と他愛のない会話ができるのは心が踊った。

完全に彼女に魅了されてしまっていた。