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雪エルフ魔女の氷結NG日記(極北系+官能短編集)
第2章 天使のような悪魔/深淵(アビス)エルフと初恋コレクター
1
「ダメだよ。だってそいつ、深淵エルフだもの。オンディーヌ(水妖エルフ)だなんて嘘だよ」
夜の街角で、そっと袖を掴んで引き止めた。
わざわざ手を出してまで止めてやったのは、無知な若者が哀れだっただけではなかった。
樽の上であられもないダンサードレスを来た顔見知りの美女は、口をへの字に曲げて旧知に文句を言う。お互いに似たような「永生」の祝福と呪いを受けていることもあって、腐れ縁のライバル関係だろうか。
深淵(アビス)エルフはエルフやドワーフの一種で人間の近縁種族でもあるものの、「最も魔族に近い」ともされている。しかし外観では他のエルフ部族と区別がしづらい(慣れない人間の目からすればなおさらだ)。闇術や呪いの術・幻惑と撹乱魔法に巧みで邪悪・冷酷な傾向が最も強く、ソーニャからしても性悪な集団だと思う。女だって男を騙して死ぬまで生気を吸い取るようなことも頻繁にやるし、魔族や犯罪者と行動したりつながっていることもしばしばなのだ。
「なんだよー。商売の邪魔するなっての」
「違うわよ。私の方が先約なの」
「そうなのかよ?」
お互いに付き合いで性格は知っているから、ソーニャが出任せの嘘を言っているのでないのは察したものらしかった。
このネラについて言えば、ソーニャ自身には必ずしも敵というわけではない。一口に「深淵エルフ」とは言っても、やはり個体差や個人差も大きいのだ。コイツに関して言えば、適当に加減を弁えているからましな部類かもしれない。実際のところ人間側の魔術師伯爵などとつながっていることもあり、加害や実害の度合いも少ないため、こんな町中でさして咎められずブラブラしているゆえんでもあるだろう。
そこで、ソーニャはポケットから紫水晶を取り出してポンと投げた。キャッチしたネラはニンマリ。
「つまみ食いくらいは良いけどさ。あんまり酷いことはしないでよね。特にこの子には」
「毎度。なるだけそうするさ」
「もし、あんまり舐めた真似すると殺す」
これもただの脅し文句でなく、遠い過去に怒り狂って鞭打ち殺したことがある。幾度となく戦っており、殺し合ってはいるものの、お互いに不死身に近いために最終決着はつかず終わりはない。いわゆる「喧嘩友達」で(殺し合いですら喧嘩でしかない)、勝敗の戦績は五分五分といったところか。
「うっわ、怖いねえ! 色キチの雪エルフは!」
「ダメだよ。だってそいつ、深淵エルフだもの。オンディーヌ(水妖エルフ)だなんて嘘だよ」
夜の街角で、そっと袖を掴んで引き止めた。
わざわざ手を出してまで止めてやったのは、無知な若者が哀れだっただけではなかった。
樽の上であられもないダンサードレスを来た顔見知りの美女は、口をへの字に曲げて旧知に文句を言う。お互いに似たような「永生」の祝福と呪いを受けていることもあって、腐れ縁のライバル関係だろうか。
深淵(アビス)エルフはエルフやドワーフの一種で人間の近縁種族でもあるものの、「最も魔族に近い」ともされている。しかし外観では他のエルフ部族と区別がしづらい(慣れない人間の目からすればなおさらだ)。闇術や呪いの術・幻惑と撹乱魔法に巧みで邪悪・冷酷な傾向が最も強く、ソーニャからしても性悪な集団だと思う。女だって男を騙して死ぬまで生気を吸い取るようなことも頻繁にやるし、魔族や犯罪者と行動したりつながっていることもしばしばなのだ。
「なんだよー。商売の邪魔するなっての」
「違うわよ。私の方が先約なの」
「そうなのかよ?」
お互いに付き合いで性格は知っているから、ソーニャが出任せの嘘を言っているのでないのは察したものらしかった。
このネラについて言えば、ソーニャ自身には必ずしも敵というわけではない。一口に「深淵エルフ」とは言っても、やはり個体差や個人差も大きいのだ。コイツに関して言えば、適当に加減を弁えているからましな部類かもしれない。実際のところ人間側の魔術師伯爵などとつながっていることもあり、加害や実害の度合いも少ないため、こんな町中でさして咎められずブラブラしているゆえんでもあるだろう。
そこで、ソーニャはポケットから紫水晶を取り出してポンと投げた。キャッチしたネラはニンマリ。
「つまみ食いくらいは良いけどさ。あんまり酷いことはしないでよね。特にこの子には」
「毎度。なるだけそうするさ」
「もし、あんまり舐めた真似すると殺す」
これもただの脅し文句でなく、遠い過去に怒り狂って鞭打ち殺したことがある。幾度となく戦っており、殺し合ってはいるものの、お互いに不死身に近いために最終決着はつかず終わりはない。いわゆる「喧嘩友達」で(殺し合いですら喧嘩でしかない)、勝敗の戦績は五分五分といったところか。
「うっわ、怖いねえ! 色キチの雪エルフは!」