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雪エルフ魔女の氷結NG日記(極北系+官能短編集)
第2章 天使のような悪魔/深淵(アビス)エルフと初恋コレクター
2
「なんだか、昔にあったときより若くなってない? ぼくが大きくなったせいでそんな風に感じるだけなのかもしれないけど」

「そんなことないと思う。前に会ったときは、人間だったら二十歳のミドルくらいだったけど、今は十代の終わりくらいかも。こんなときに出くわすなんて、あなたって、ものすごくラッキーね」

 ソーニャの言葉は平然としながら、内容は奇異で、青年は理解が追いついていないらしい。それで種を明かしてやることにする。

「ほら、私って「雪の再結晶」の奥義魔法がかかってるから、致命傷で死んだりすると自動再生で復活するのは話したでしょ? それでそのときに雪の結晶を復元するみたいに「良い状態」に復旧なんだけど、その時々で年齢に幅やブレが出るのよ」

「そうだったんだ?」

「それでさ」

 ソーニャはもう一つの秘密を口にした。
 あのときに言葉を濁して、この「少年」の「いつか大人になったら結婚してくれるか?」という問いかけを却下した理由を。

「で、自動修復ってのも良し悪しでさ。私はそのせいで子供が産めないの。妊娠まではするんだけど、三カ月くらいで「アブノーマルで状態異常」みたいになって自動リセットになっちゃうから。だから、それが「恋はできるけど結婚はできない」理由なのよ」

 せめて最初から子供ができない体ならまだ良いのだけれど「出来る」からこそ厄介。迂闊に気に入った相手の子供を妊娠すると「この子は無事に生まれられずに死ぬ運命なのだ」と思って憔悴して半狂乱みたいになってしまう。無駄と承知で「再結晶奥義魔法」を封印や一時停止や解除しようとして七転八倒し、リセットされたときの虚脱感や喪失感は最悪だ(号泣どころか、健康状態のはずなのに嘔吐したこともある)。
 だからセックスもあまり好きでなかった。あとの結果を考えると、やっぱり二の足を踏む。
 結婚そのものは実はソーニャ自身には構わない。しかしそうすると、相手にした男が(自分に拘束されることで)子供を持てなくなってしまう。不毛な人生の巻き添えにしたくない。だからソーニャは「二番目」の「恋人や愛人」止まりになるしかないし、だから「初恋コレクター」になって心理的な埋め合わせ。
 そうして付き合いのある「恋人の家系」があちこちにあることで、孤高ではあっても孤独を免れていた。それもこれも、特異な立場と境遇ゆえの人生の知恵なのだろうか。
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