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透明なリーシュに結ばれて
第4章 宿
部屋に入ると左奥にベッドが二つ並んでいるのが見えた。胸がドキドキした(大学生になっても胸はドキドキする)。帆夏はメゾネットタイプの部屋の二階に上がっていった。二階……こんな部屋に泊ったことなど一度もない。僕は帆夏の後にただついていくだけ。
二階はリビング(リビングの向こうはデッキテラス)になっていて、帆夏はベージュ色のシングルチェアに身を預けた。僕は帆夏の前にあるソファに腰を下ろした。すると階下からホテルスタッフの声が聞こえた。帆夏はスタッフに二階に上がってくるように言ったが、おそらくその声は階下には届いていない。だから僕が、一階に向かってホテルスタッフに上に来てくれと声をかけた。
スタッフはウエルカムドリンクのスパーリングワインとフルーツを持って二階に上がってきた。スタッフがテーブルの上にそれらを置くと、帆夏と僕はスタッフに「ありがとう」とほぼ同時に言った。
帆夏はスパーリングワインを取ると目を瞑ったままグラスを口につけ、三分の一くらいを喉の奥に流した。帆夏は疲れていた。それは僕でなくとも誰が見てもそう感じられるくらいに疲労の色が帆夏の体全体に現れていた。
「内田里奈……さんだったわよね」
「えっ?」
「翔君の初体験の相手」
「信じてくれるんですか」
「翔君の話を信じていなかったらここには来てないわ」
「……」
どう返せばいいのかわからない。
「彼女笑っていたわよ」
「はっ?」
「翔君ではなくて私を見て笑ったの。むかついたわ」
「……むかつく」
そういえばさっき帆夏がそう言ったような気がする。
「何となくわかるわ、あの笑い」
「会ったんですか? ていうか見えたんですか?」
「ばっちり」
そう言うとアニメのヒロインのような帆夏の目が、僕に向かってきた。
「あの……」
「そう。どういうわけか私にはそういう力があるみたい」
「あの……」
「気になる?」
「少し」
本当は少しなんかではない。めちゃめちゃ気になる。
「でも私を見て笑ってすぐに消えたわ」
「……消えた」
「そう、消えたわ」
「……」
「翔君、私シャワーを浴びてくるわ。覗きみたいなマネは絶対にダメだから、わかった?」
「絶対に覗きません!約束します!」
「ふふふ。この部屋は露天風呂がついているから後で一緒に入りましょ」
「……」
心臓が止まるかと思った。
二階はリビング(リビングの向こうはデッキテラス)になっていて、帆夏はベージュ色のシングルチェアに身を預けた。僕は帆夏の前にあるソファに腰を下ろした。すると階下からホテルスタッフの声が聞こえた。帆夏はスタッフに二階に上がってくるように言ったが、おそらくその声は階下には届いていない。だから僕が、一階に向かってホテルスタッフに上に来てくれと声をかけた。
スタッフはウエルカムドリンクのスパーリングワインとフルーツを持って二階に上がってきた。スタッフがテーブルの上にそれらを置くと、帆夏と僕はスタッフに「ありがとう」とほぼ同時に言った。
帆夏はスパーリングワインを取ると目を瞑ったままグラスを口につけ、三分の一くらいを喉の奥に流した。帆夏は疲れていた。それは僕でなくとも誰が見てもそう感じられるくらいに疲労の色が帆夏の体全体に現れていた。
「内田里奈……さんだったわよね」
「えっ?」
「翔君の初体験の相手」
「信じてくれるんですか」
「翔君の話を信じていなかったらここには来てないわ」
「……」
どう返せばいいのかわからない。
「彼女笑っていたわよ」
「はっ?」
「翔君ではなくて私を見て笑ったの。むかついたわ」
「……むかつく」
そういえばさっき帆夏がそう言ったような気がする。
「何となくわかるわ、あの笑い」
「会ったんですか? ていうか見えたんですか?」
「ばっちり」
そう言うとアニメのヒロインのような帆夏の目が、僕に向かってきた。
「あの……」
「そう。どういうわけか私にはそういう力があるみたい」
「あの……」
「気になる?」
「少し」
本当は少しなんかではない。めちゃめちゃ気になる。
「でも私を見て笑ってすぐに消えたわ」
「……消えた」
「そう、消えたわ」
「……」
「翔君、私シャワーを浴びてくるわ。覗きみたいなマネは絶対にダメだから、わかった?」
「絶対に覗きません!約束します!」
「ふふふ。この部屋は露天風呂がついているから後で一緒に入りましょ」
「……」
心臓が止まるかと思った。