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透明なリーシュに結ばれて
第4章 宿
 僕は何度も何度も体を洗った。髪、胸、お腹、脚、もうどこをどう洗ったのかを忘れている。でも洗わなければいけない。どんなに時間がかかろうと洗い続けるのだ。
 いつまで? それはつまり……つまり僕のペニスが萎えてくれるまで。こんな無様な格好で露天風呂に浸かる帆夏のところには行けない。
 まぁ勃起した状態を無様とよべるかどうかはわからない(たくさんの男性からは割れんばかりの拍手をもらえるかもしれない)。
 でも……でもこれではいけないというサインみたいなものが僕の中から出ている。大人の女性の前では、これはまずいのではないのか? まぁ、そういうサインだ。自分をコントロールできない男はガキで、そういうガキは、要するに……大人の女性に立ち向かうには百年早いんだよ、と見えない誰かに笑われている感じがするのだ。敗北、負け、ルーザー、もう何でもいい、そういう言葉が寄り道することなく僕に向けられてしまう。
 だから僕は自分のペニスをなだめる。「落ち着け。いや、落ち着いてください。でないと僕は行けないのだ。帆夏のところに行くことができない。硬くなるなよ。頼むから大きくならないでくれ」と僕は自分のペニスに懇願する。
 そう考えれば考えるほど、ちらっと見えた帆夏の裸……のような幻が僕の冷静になろうとする心を乱していく。
 そしてこういうときに限って天使は僕に声を掛ける。
「翔君、何しているの?」
「……」
 まさかちんぽが勃起しているので、恥ずかしくてそっちに行けない、なんて死んでも言えない。言えるはずがない。
 でも、天使は僕のちんぽの事情は知らないみたいでこう続ける。
「翔君が来ないんだったら、私もう上がるわよ」
「行きます!」
 間髪入れずに僕はそう叫ぶ。そう、叫ぶ。
 ここまで来て一人露天風呂なんて真っ平御免だ。一人で露天風呂? あり得ない。冗談じゃない。
 無様な格好でも僕は行く。勃起していてもいいじゃないか。萎えてる方がどうかしているんだ。萎んだままのちんぽの方がみっともない……多分。そう僕は自分に言い聞かせる。躊躇う自分をどう説き伏せるかが重要だ。誰のために? もちろん僕のためにだ。
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