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透明なリーシュに結ばれて
第5章 愚か者
 僕は帆夏に白旗を上げている。しかし、僕のペニスが戦闘態勢を解かないのだ。僕は至急帆夏と軍縮会議を開きたいのだが……どうして僕のペニスはやる気満々なのだ。
 どこかのプロ野球球団は選手に「常に紳士たれ」と言っている。僕も僕のペニスに言う「常にとは言わない。でもこんなときだけはお願いだから大人しくなってくれ」と。
 なぜだ? なぜなんだ? どうして僕は自分を制御できないんだ。
 そんな風に自分を責めているときだった。
「ドスケベな翔君」
「はい!」
 自分で言うのも変だが素晴らしい返事だった。素晴らしい返事……ではなくて、スケベという言葉の前にドがついてしまったことに僕は驚くべきだ。おそらくこれはスケベの最上級なのだろう、とドスケベな僕は考えた。
「こっちにいらっしゃい」
「こっち……?」
「ここ」
 そう言って帆夏は自分の隣を指で指した。
「わかりました!」
 返事だけは抜群にいい、が。帆夏の隣に今僕がいく資格あるのか? そんな資格なんて僕にはない……が行きたい。帆夏の隣に行きたいんだ! と心の中で叫ぶ。そして僕は僕を躊躇わせている例のものを見る。
 どうしてなんだ、俺のちんぽ。折角萎えそうだったのにどうしてなんだ!帆夏が言った「こっち」がいけないんだ。僕の頭に一瞬過るものがあった。それは……。それはもう一回アタックしろ、という無謀な指令がテレパシーで僕に伝えられたのだ。
 無理に決まってるやん、と突然の関西弁で僕は辛うじて冷静になることができた。
 こうなれば正々堂々と立ち向かうしかない。タオルなんかいらない。見てくれ僕のいちもつを!
 僕は立ち上がり、そしてあの間抜けな格好(腰に手を当て自分の肉棒を帆夏に見せつけるように突き出す格好)で湯舟に足を浸けた。
「ブラボー」
 帆夏は僕に、いや僕のちんぽを拍手して讃えた。
「翔君、笑えるんですけど。何だかすごいよね翔君のおちんちん。国の重要文化財に指定してもらったら」
 以外なことに帆夏にもユーモアがあったのだ。そして僕は中学の修学旅行をなぜか思い出した。国の重要文化財である京都奈良の神社仏閣、そして僕のちんぽ。
 まずい、これは実にまずい。これでは未来永劫京都奈良にお住いの方々、並びにご出身の方々に恨まれる。だから僕は、僕のちんぽの代わりに重要文化財を辞退する。
 誠に申し訳ございません。
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