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透明なリーシュに結ばれて
第9章 楽園
「コーチは彼女とかいるの?」
「いや、いません」
一瞬下田が頭の中に浮かんだ。彼女はいないと平気で言う自分に僕は戸惑う。僕も大人の男のずるさが身についてきたのだろうか。
「どうしていないの? バスケやっててこんなに背が高いんだもの。彼女がいないなんておかしいわ」
何度でも言う。背が高いだけでもてるなんてことはない。
「小学校から中学、高校そして今まで彼女ができたことは一度もないです」
「本当なの?」
「残念ながら本当です。僕には彼女はいません」
そう言って僕は心がチクリとした。僕にもまだ良心のようなものは残っているのだろうか。
「コーチはどんな女の子がタイプなの?」
きたきたきた。この質問待ってました。
「言っていいですか?」
「どうぞ」
「大人の女の人。例えば文さん(文子は僕をコーチと呼び、僕は文子を文さんとよぶ)みたいな人がタイプです」
「えっ? それ本当?」
「嘘は言いません。文さんみたいな人がタイプです」
「こんなおばあちゃんでも?」
「文さんはおばあちゃんなんかじゃありません。美人だし、何というか品があって清楚そいというか……とにかく素敵な女性です」
「お世辞でも嬉しいわ」
「僕はお世辞が言える人間じゃないです。本当に文さんは素敵です。できれば付き合いたいくらいです」
やはり自分には男の小賢しいずるさが身についてきたようだ。
「本当に付き合いたい?」
「本当に付き合いたいです」
アルコールのせいかもしれない、女性に対して臆することがなくなってきた。
「ふふふ」
文子はそう笑ってワイングラスに口をつけた。
しばらく沈黙が続いた。その間僕はステーキを頬張り、文子はワインを飲み続けていた。いつもの僕ならここでお仕舞い。一歩も進むことができず撤退するところだ。
でも僕はこう文子に言った。
「あの、これからも僕とバスケの試合とか一緒に行ってもらえませんか?」
「私なんかでいいの?」
「僕は文さんと一緒に行きたいんです」
「バスケの試合だけ?」
「えっ?」
「バスケの試合だけでいいの?」
「だめです」
「じゃあ……何?」
「僕……ずっと彼女がいないんで」
「ずっと彼女がいないから?」
「だから僕……童貞なんです」
思いきり嘘を言った。
「童貞?」
「お願いします!」
お願いします、僕とエッチしてください、の後半部分はどうしても言えなかった。
「いや、いません」
一瞬下田が頭の中に浮かんだ。彼女はいないと平気で言う自分に僕は戸惑う。僕も大人の男のずるさが身についてきたのだろうか。
「どうしていないの? バスケやっててこんなに背が高いんだもの。彼女がいないなんておかしいわ」
何度でも言う。背が高いだけでもてるなんてことはない。
「小学校から中学、高校そして今まで彼女ができたことは一度もないです」
「本当なの?」
「残念ながら本当です。僕には彼女はいません」
そう言って僕は心がチクリとした。僕にもまだ良心のようなものは残っているのだろうか。
「コーチはどんな女の子がタイプなの?」
きたきたきた。この質問待ってました。
「言っていいですか?」
「どうぞ」
「大人の女の人。例えば文さん(文子は僕をコーチと呼び、僕は文子を文さんとよぶ)みたいな人がタイプです」
「えっ? それ本当?」
「嘘は言いません。文さんみたいな人がタイプです」
「こんなおばあちゃんでも?」
「文さんはおばあちゃんなんかじゃありません。美人だし、何というか品があって清楚そいというか……とにかく素敵な女性です」
「お世辞でも嬉しいわ」
「僕はお世辞が言える人間じゃないです。本当に文さんは素敵です。できれば付き合いたいくらいです」
やはり自分には男の小賢しいずるさが身についてきたようだ。
「本当に付き合いたい?」
「本当に付き合いたいです」
アルコールのせいかもしれない、女性に対して臆することがなくなってきた。
「ふふふ」
文子はそう笑ってワイングラスに口をつけた。
しばらく沈黙が続いた。その間僕はステーキを頬張り、文子はワインを飲み続けていた。いつもの僕ならここでお仕舞い。一歩も進むことができず撤退するところだ。
でも僕はこう文子に言った。
「あの、これからも僕とバスケの試合とか一緒に行ってもらえませんか?」
「私なんかでいいの?」
「僕は文さんと一緒に行きたいんです」
「バスケの試合だけ?」
「えっ?」
「バスケの試合だけでいいの?」
「だめです」
「じゃあ……何?」
「僕……ずっと彼女がいないんで」
「ずっと彼女がいないから?」
「だから僕……童貞なんです」
思いきり嘘を言った。
「童貞?」
「お願いします!」
お願いします、僕とエッチしてください、の後半部分はどうしても言えなかった。