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透明なリーシュに結ばれて
第10章 瓦解のとき
「痛いじゃない!バカ!下手くそ!」
「……」
 もううんざりだ。どうしてこんな小娘に僕は罵倒されなけれなばらないのだろうか。すべては山名と権藤のせいだ。しかし僕は山名と権藤からすでに報酬を受け取っている……が、話が違うじゃないか!
「ちゃんとやってよバカ!」
「あのさ、もう無理だと思うから止めようよ」
「止めないわよバカ!」
「はいはい」
 どうしてこんなガキとラブホにいるのか、数時間前に話を戻す。
 合コン会場到着。僕はそこで真相を知ることになる。スマホに映っていた三人の女のうち一人が全くの別人だったのだ。
 僕は咄嗟に山名と権藤を見た。二人は僕を無視した。そこで僕はすべてを悟った。また僕は騙された。別人の女はただでさえ若く見えるのに、ツインテールの髪型でとても地味なワンピースを着ていた。絶対に高校生だ。大学生の女がワンピースの上に赤いポーチをたすき掛けにするなんて姿、僕は見たことがない。
 でもどうしてこんなガキが山名と権藤がセッティングする合コンに来ることができたのだろうか。
 あれこれ考えるのはやめにする。それよりこのガキは僕が引き受けなければならないのだろう。冗談じゃない。僕はガキが大嫌いだ。
 必死に四人グループの話に割り込もうとしたが、山名と権藤はそれを許さなかった。徹底したディフェンス。拙いことに僕はガキだけでなく若い女も苦手だった。
 そのときだった。
「翔ってまじで背が高いね」
「……」
 取り合えず聞こえなかったことにした……いや違う!何でこのガキは僕の名前を知っているんだ。考える必要なんかない。僕の個人情報は簡単に売られている。山中か権藤によって。
「バスケで大学入ったんでしょ」
「僕はスポーツ推薦で大学に入ったんじゃない」
 この間違った情報だけは看過できない。
「嘘!まじで!」
「……」
 僕のデータは誰かによって捻じ曲げられている。
「翔って背が高いけどもてないんでしょ」
「……」
 大きなお世話だ。ていうかこのガキまじで馴れ馴れしい。背が高い……が、もてない。屈辱の言葉。
 怒りの目を山名と権藤に向けると、やつらは目の前の獲物を落とすためになりふり構わず二人の獲物に語りかけ、場を必死に盛り上げていた。そして……。
「おっと、ここでカップル誕生ですな」
 山名が僕とクソ生意気なガキを見てそう言った。
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