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透明なリーシュに結ばれて
第10章 瓦解のとき
「……」
 何をするんだ!と言いたかったのに言葉が出ない。
「めっちゃふにゃふにゃ」
 忍は笑いながら僕のいちもつを握手するように掴んだ。
「おい、ふざけるな!」
 奇襲攻撃を受けた僕は、大切なペニスをトランクスの中にしまった。
 ところがこの忍という女、まじでやばい女だったのだ。ポーチからスマホではなく例の生徒手帳を取り出して、僕の顔の前に突き出した。
「○○」
 わざと声を出さずに、口の形だけで僕を脅した。「警察」と間違いなく忍は僕にそう伝えた。
 このとき、忍というガキが只者でないことがわかった。女子高生が遊びの延長で脅迫ごっこをしているのではない。忍は間違いなく僕を脅している。
 宮田忍、合コンの席にいた二人の女が通う大学の付属高校の生徒だと言っている(本人談)。女の顔を狐顔と猫顔に分けたら、忍は間違いなく猫顔の部類に入る。大きな目、鼻は少し低いがきりっと鼻筋は通っている。薄いピンクのリップをつけているのか、唇は何だか濡れているように見える。 
 大人になろうとしている努力はわかるが、いかんせん忍の顔、そして体は大人になり切れていない(胸の膨らみほとんどなし)。
 はっきり言ってそんな子供が容赦なく僕を脅しているのだ。魔性の女ってこんなガキのことを言うのではないはずだ。しかし、忍は間違いなく魔性の女だ。いや魔物だ。
 忍は自分の作戦を遂行するために、僕と僕の言葉を瞬時に分析して僕の逃げ場を消していった。
 勝てない、少なくともこの状況下では僕は忍に太刀打ちできない。おそらく忍はそれすら理解しているはずだ。僕は忍にコントロールされている。
「……」
 僕はトランクスにしまったいちもつをまた出した。
「……」
 口角をあげた忍が無言で僕のペニスを掴んだ。
 心の中が冷たくなるのを感じた。にんまりと笑いながら忍は、思うようにことが進んでいることに満足しているのだろう。僕は忍が怖い。忍は小娘だが小娘ではない。宮田忍はガキだがガキではない。
 僕がどんなに抗っても今ここでは忍に対抗することはできない。
「もういいだろ。僕のちんぽも見たことだし、それに」
「それに翔のちんぽの匂いも嗅いだし、触ったから終わり?」
「そういうこと。見学終了だ。君だってもう目的は果たしただろ」
 僕の最後の抵抗だ。
「目的はまだ果たしてないよ」
 嫌な予感。
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