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透明なリーシュに結ばれて
第3章 再び
 浅草で鰻を食べて僕と帆夏は台場公園に向かった。まだ辺りは明るい。それでも一秒一秒空は夜の色に変わろうとしていた。
 このまま帆夏と別れるのかと思うと、強烈な不安が僕を襲ってきた。動悸がする。体がこんな変化をしたのは初めてだ。もう二度と帆夏とデートするなんてことはない。例えば僕が誘ったとしても、大人の余裕で帆夏はそれを断る……に決まっている。わかる、僕にはそれがわかる。食い下がる術を僕は知らない。でも諦めたくない。帆夏を諦めたくない。
 帆夏が誰かのものであっても構わない。僕は帆夏を失いたくない。
 公園を歩いてもカップルたちの目は帆夏に向かった。そういう目は帆夏を見ることに飽きると必ず僕にもやって来る。ついでにやって来る目は僕に止まると「えっ?」と言う言葉を僕に置いていく。そんなことはもうどうでもいい。そういった数々の疑問を含んだ眼には僕は慣れた。
 そんな「えっ?」っていう目よりも今は帆夏のことで頭がいっぱいだ。やばい、憧れが恋に変わっていくような感じがした。まずい、このままではまずい。
「やっぱり綺麗ね」
 帆夏はそう言った。やっぱり……って。
 そしてしばらく無言が続く。ライトアップされたレインボーブリッジが憎らしくなった。橋が輝けば輝くほど、僕の恋の炎がだんだん小さくなっていく。
 今日という一日を振り出しに戻したい。一度だけ僕の切ない願いを神様は聞いてくれないだろうか。
「ところで翔君、友達に裏切られたってどういうこと?」
「……」
 僕は最初何のことかわからずに、帆夏に目だけをやった。
「名前は忘れたけど翔君がうちの店に来た時、二人のお友達がいたでしょ」
「山名と権藤」
「そう、その二人。その山名君と権藤君に裏切られたってどういうこと?」
「裏切られた……あっ!」
「思い出した?」
「あの事ですか」
「そう、お友達に裏切られたお話」
「つまらない話です」
「つまらなくて構わないわ」
「つまらな過ぎて怒らないでくださいね」
「怒らないわよ。ふふふ」
 僕は去年の冬、合コンに誘われずに、三人で行くはずだったスノーボードを一人で行った話をした。結局、山名にも権藤にも彼女が出来なくて、一人で行ったスノボでは僕が大けがをしたことを帆夏に話した……。
 話をそこで止めておけばよかったのだ。僕はついつい病院での出来事を話してしまった。

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