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さげまん女の憂鬱~こんな私でよければ~
第3章 スピード違反の女
「仕方ないわね
見たけりゃどうぞ」
渋々ながら運転席の女性は
運転免許証を礼二に差し出した。
免許証を見て礼二は驚いた。
『清田このみ』
礼二が知っている名前とは違っていたが
顔写真は間違いなく『えりか』だった。
「えりか?
えりかだろ?俺だよ礼二だよ」
礼二はサングラスを取って
素顔を運転手の女に見せるように
運転席へ顔を突っ込んだ。
「礼二さん?」
うわぁ~久しぶりね
運転席の女もサングラスを外して
色っぽい顔を礼二に見せた。
女は礼二が妻の良美と一緒に
よく通っていたスナックで
カウンターレディとして
「えりか」と名乗って働いていた女だ。
当初はカクテルバーだった店だが
オーナー夫妻が引退して
大杉拓也という青年を雇ったが
これがまた彼の作るカクテルが不味くて
あっという間にスナックに鞍替えした。
スナックにしたからには
華やかさが必要だと
カウンターレディを雇いいれたが
あまりにも店が暇すぎたうえに
大杉がえりかを口説き始めたので
彼から逃げるように彼女はすぐに店をやめた。
「礼二さん、元気にしてた?」
免許証の確認が終わって彼女に返すと
「今度また飲みにいきましょうね」と
何事もなくエンジンをかけて発進させようとした
「おいおい、顔馴染みだからといって
違反を見逃すわけにはいかないよ」
礼二はエンジンを切って車から降りるように
彼女を促した。