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さげまん女の憂鬱~こんな私でよければ~
第1章 口説かれる
「そうね…バーボンをロックで頂戴」
今夜は徹底的に呑んで酔い潰れてやろうと
最初からペースを早めるつもりだった。
二杯目をお代わりして
ほろ酔いになってきた頃、
スナックの扉が開いて客が入ってきた。
「あら、大杉くん、お客さまよ珍しいわね」
「良美さん、ブランクがあるから
ご存じないでしょうけど
この方は常連さんで霧島さんと仰るんですよ」
思いがけず良美に紹介された霧島は
おどけて驚いたフリをしながら
「新参者の常連で霧島と申します」と
良美に頭を下げて「お隣、よろしいですか?」と
馴れ馴れしく声をかけた。
「どうぞ」とも良美が言う前に
霧島は、まるで恋人同士のように寄り添うように
そこに座るのが当然といったように腰かけた。
「いつものでよろしいですか?」
「ああ、スコッチを頼むよ」
そのように大杉に注文してから
「このお嬢さんに
同じものをお代わりして差し上げて」と
頼んでもいないのに勝手に注文した。
「あ、いえ…私、酔いすぎたので」
お酒はもう結構よと断ろうとしたが
「いいじゃないですか
一人で呑んでいても美味しくないし
よければ付き合ってくださいよ」と
良美に席を立つタイミングを奪った。
「霧島さん、口説こうなんて無駄ですよ
なんてたって良美さんは
旦那さんとラブラブなんですから」
「えっ?彼女、結婚してるの?」
「はい、残念ながら人妻です」
良美は、これ見よがしに
左手の薬指に光るリングを見せつけた。