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海鳴り
第7章 満ち潮
「たけしーっ、見てみろあれ」
誰かが叫んだ。
「あっ…、父ちゃんだ、父ちゃんの船だ、律子先生見て!
興和丸が先頭だ!」
武の指差す方向に、船団を引き連れるようにして前進してくる船。
舳先に取り付けられた一本の棹に真紅に黒で「興和丸」と染め上げられた大旗。その下には富士山からの日の出に「大漁」と描かれた旗。操舵室の上には日の丸の小旗を掲げ、船全体を大小の旗で見事なまでに雅に飾り上げた興和丸。
その勇姿に拍手と感嘆の声が沸き起こった。
それに負けじと後に続く船団の姿は勇猛で、また厳粛にさえ感じられる。
船が突堤に近づいてきた。
ボォーーーー……
「来たぞー!」
「興和丸だー」
白波をたてながら向かってくる興和丸の前方に、ねじり鉢巻をして腕を組み、真っ直ぐに陸を見据える相沢の姿が見えた。
「見ろよカズさんだ…」
「かっけぇなぁ」
拍手と歓声が更に高まる。
「父ちゃーん!」
「おやまあ、カズさん」
春子も興奮気味だ。
「男だねぇ、惚れちまうよ…」
「あははは、旦那がいるじゃねぇか春子は」
「アハハ、そうだった、うちの人は…、あ、翼、ほら…」
「あ、お父さんの船だ!」
手を振り、叫び、万歳をする群衆の注目を一身に浴びながら、興和丸は律子達の目の前に差し掛かった。
誰かが叫んだ。
「あっ…、父ちゃんだ、父ちゃんの船だ、律子先生見て!
興和丸が先頭だ!」
武の指差す方向に、船団を引き連れるようにして前進してくる船。
舳先に取り付けられた一本の棹に真紅に黒で「興和丸」と染め上げられた大旗。その下には富士山からの日の出に「大漁」と描かれた旗。操舵室の上には日の丸の小旗を掲げ、船全体を大小の旗で見事なまでに雅に飾り上げた興和丸。
その勇姿に拍手と感嘆の声が沸き起こった。
それに負けじと後に続く船団の姿は勇猛で、また厳粛にさえ感じられる。
船が突堤に近づいてきた。
ボォーーーー……
「来たぞー!」
「興和丸だー」
白波をたてながら向かってくる興和丸の前方に、ねじり鉢巻をして腕を組み、真っ直ぐに陸を見据える相沢の姿が見えた。
「見ろよカズさんだ…」
「かっけぇなぁ」
拍手と歓声が更に高まる。
「父ちゃーん!」
「おやまあ、カズさん」
春子も興奮気味だ。
「男だねぇ、惚れちまうよ…」
「あははは、旦那がいるじゃねぇか春子は」
「アハハ、そうだった、うちの人は…、あ、翼、ほら…」
「あ、お父さんの船だ!」
手を振り、叫び、万歳をする群衆の注目を一身に浴びながら、興和丸は律子達の目の前に差し掛かった。