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第2章 過去へ──出会い

「……」


律子はその鋭い目つきに戸惑い、慌てて視線を外し先を急ごうとした。


「ちょっとあんた」


よく響く低い声だった。


「……」


立ち去れば怒鳴り付けられそうなその声に、律子は仕方なく足を止めた。

屈んで釘を打っていた男が立ち上がった。

日に焼けた肌にランニングシャツ、作業ズボン姿の男の肩幅は広く、肩から伸びた腕は軽く曲げているだけで力こぶが盛り上がっている。

律子の怯えた視線には構わず、男は律子の身体を上から下までゆっくりと吟味するように冷たく眺め、そして下から上へと視線を戻した。


「な、なんですか…」


逃げる決意を固めながら、律子は金槌を握ったままの男の節くれだった手を見つめた。


まだ死にたくない…


「あんたが先生か…」

「…っ…」

「あんたが新しい先生なのか？」


どう返事をしたらこの場を切り抜けられるのだろう


「どうなんだ」


落ち着いた低い声に意を決して答える。


「は、はい」


抱えていた荷物は腕から離れ、直立不動でこぶしを握りしめていた。


「そんな細っこい身体でやっていけるのか」

「………」

「どうなんだ」