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海鳴り
第8章 海風
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外は相変わらず風が強く、マフラーに深く埋もれていても頬が冷たい。
髪を掻き揚げるように後ろへとなびかせながら、律子はアザミへ向かっていた。
ちょうどスーパーの角に差し掛かった時、風がぴたりと止んだ。
冷たくなってしまった髪を整えながら角を曲がり、止んだままの風にほっとしながら『本日休業』の札が下がっているアザミのドアを引いた。
「いらっしゃいませ」
亜紀が笑顔で出迎える。
「こんばんは、ご招待ありがとうございます」
「どうぞどうぞ、春子さんもついさっき来たばかりなんですよ」
「律子先生こんばんは」
「こんばんは。…翼くんは大丈夫なんですか?
…あ、どうもすみません…」
律子は亜紀にコートを手渡しながら案内されたカウンター席の春子の隣に座った。
「うちは寝るのが早いですからね、パーティーはお開き。あはは…今夫と二人でゲームを楽しんでますよ。
でも少ししたら帰ります、あの子ああ見えて寂しがりやだから、夜は私がいないとダメなんですよ…まったく…」
「しょうがないわよ春子さん、まだ1年生なんだし、それに今だけよ」
「そうね、仕方ないか、あはは…」