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海鳴り
第8章 海風
亜紀と春子はお互いが見てきた相沢の過去を、淡々と律子に話して聞かせた。
叔父の遺した船と家の借金の返済の為、そして高校生だった真理子と叔母の生活を支える為に、相沢が大学を辞めて町に戻った事。
叔父の後を継いで漁師になる決意をし、その頃まだ元気だった平田に頼み込んで弟子入りした事。
休みの度に町に戻って相沢に逢いに来る美佐子を避けるようになった事。
「カズさんはたった一人で丸ごと背負って、それまでお世話になってきた恩返しをする覚悟を決めたんですよ…、そこに美佐子ちゃんを巻き込む訳にはいなかった…」
「……」
律子は黙って二人の言葉に耳を傾けた。
「でも、美佐子ちゃんは別れないと言い張ってねぇ…」
「ほんとに可哀想だったらしいわね」
「えぇ、見かけに寄らず美佐子ちゃん気が強い所があってねぇ…、自分も大学辞めてカズさんと船に乗るなんて言い出して、ご両親とケンカしたり…」
「必死だったのね」
「そう、二人とも必死だった。美佐子ちゃん本当にカズさんが好きだったもの……。
でも結局、美佐子ちゃんの大学卒業を待たずにお父さんの転勤が決まって、一家でここを離れてしまった…」
叔父の遺した船と家の借金の返済の為、そして高校生だった真理子と叔母の生活を支える為に、相沢が大学を辞めて町に戻った事。
叔父の後を継いで漁師になる決意をし、その頃まだ元気だった平田に頼み込んで弟子入りした事。
休みの度に町に戻って相沢に逢いに来る美佐子を避けるようになった事。
「カズさんはたった一人で丸ごと背負って、それまでお世話になってきた恩返しをする覚悟を決めたんですよ…、そこに美佐子ちゃんを巻き込む訳にはいなかった…」
「……」
律子は黙って二人の言葉に耳を傾けた。
「でも、美佐子ちゃんは別れないと言い張ってねぇ…」
「ほんとに可哀想だったらしいわね」
「えぇ、見かけに寄らず美佐子ちゃん気が強い所があってねぇ…、自分も大学辞めてカズさんと船に乗るなんて言い出して、ご両親とケンカしたり…」
「必死だったのね」
「そう、二人とも必死だった。美佐子ちゃん本当にカズさんが好きだったもの……。
でも結局、美佐子ちゃんの大学卒業を待たずにお父さんの転勤が決まって、一家でここを離れてしまった…」