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海鳴り
第8章 海風
──ここを出て行くヤツを追ったりはしねえ…
「あの日、カズさんはみんなから少し離れて美佐子ちゃんちの車を見送ってたの…でも、すぐに背中を向けて港の方に行っちゃって…私達の方が切なくて泣いちゃった…」
「ねぇ春子さん…、その頃からかしら、カズさんが変わってしまったのは…うちにも顔を出してくれてたけど、段々無口になって…、よくあの席で一人で飲んでたわ」
亜紀はカウンターの一番奥の席を指差した。
「そうかもしれない」
相沢が一人、手酌でビールを呑んでいる姿が律子には見える。
夢を捨て
重い荷物を背負って
「あの…」
ようやく律子が口を開いた。
「相沢さんと真理子さんは従兄妹なんですね」
亜紀がコクンと頷いた。
「叔母さんも体が弱くなってしまって…、小さい頃から仲良く一緒に育ったカズさんに真理ちゃんを託したかった…、のかな?」
「でも真理子さんは…中学からグレてたからねぇ…、カズさんの手に負えない程…」
春子はそう言いながら時間を確認した。
「あ、そろそろ帰らなくちゃ…」
「まあ、残念…。また今度ゆっくり…」
「そうするわ、ごめんなさい。…律子先生、ごゆっくり」
春子は亜紀と律子に挨拶をして名残惜しそうに店を後にした。
「あの日、カズさんはみんなから少し離れて美佐子ちゃんちの車を見送ってたの…でも、すぐに背中を向けて港の方に行っちゃって…私達の方が切なくて泣いちゃった…」
「ねぇ春子さん…、その頃からかしら、カズさんが変わってしまったのは…うちにも顔を出してくれてたけど、段々無口になって…、よくあの席で一人で飲んでたわ」
亜紀はカウンターの一番奥の席を指差した。
「そうかもしれない」
相沢が一人、手酌でビールを呑んでいる姿が律子には見える。
夢を捨て
重い荷物を背負って
「あの…」
ようやく律子が口を開いた。
「相沢さんと真理子さんは従兄妹なんですね」
亜紀がコクンと頷いた。
「叔母さんも体が弱くなってしまって…、小さい頃から仲良く一緒に育ったカズさんに真理ちゃんを託したかった…、のかな?」
「でも真理子さんは…中学からグレてたからねぇ…、カズさんの手に負えない程…」
春子はそう言いながら時間を確認した。
「あ、そろそろ帰らなくちゃ…」
「まあ、残念…。また今度ゆっくり…」
「そうするわ、ごめんなさい。…律子先生、ごゆっくり」
春子は亜紀と律子に挨拶をして名残惜しそうに店を後にした。