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海鳴り
第9章 夕凪
「捨てたりなんかしない…、ちゃんと帰ってくるわ」
「ほんと?」
武が初めて顔を上げた。
「本当よ。
武くん、ちょっとここで待ってて」
律子はこぶしを握ったまま保健室を後にした。
ズカズカと廊下を歩き、荒い呼吸を繰返しながら校長室を目指す。
職員室を通り過ぎ、校長室の前で立ち止まると、ノックもせずにそのドアを開けた。
「山下先生…」
ソファに座った校長と向かい合って座っているさっきの上級生が目に入った。
「失礼します」
律子はツカツカとその男子児童の横に立った。
「あなたは武くんにどうしてあんな酷い事を言ったの!」
律子の剣幕に怯えたのか男子児童が顔をひきつらせて立ち上がった。
「ごめんなさいっ」
「あなたの言葉で武くんがどんなに傷つい…」
「山下先生…、ちょっとこちらへ…」
校長が話を遮り律子の背を押して廊下に出た。
「校長先生はあの子が武くんに何を言ったかご存知ですか?」
律子は怒りがおさまらない。
「えぇ、聞きました」
「だったら…」
「山下先生…落ち着いて下さい」
「落ち着けません」
「落ち着きなさいっ」
「っ…」
強い意思を含んだ校長の声が律子を黙らせた。
「ほんと?」
武が初めて顔を上げた。
「本当よ。
武くん、ちょっとここで待ってて」
律子はこぶしを握ったまま保健室を後にした。
ズカズカと廊下を歩き、荒い呼吸を繰返しながら校長室を目指す。
職員室を通り過ぎ、校長室の前で立ち止まると、ノックもせずにそのドアを開けた。
「山下先生…」
ソファに座った校長と向かい合って座っているさっきの上級生が目に入った。
「失礼します」
律子はツカツカとその男子児童の横に立った。
「あなたは武くんにどうしてあんな酷い事を言ったの!」
律子の剣幕に怯えたのか男子児童が顔をひきつらせて立ち上がった。
「ごめんなさいっ」
「あなたの言葉で武くんがどんなに傷つい…」
「山下先生…、ちょっとこちらへ…」
校長が話を遮り律子の背を押して廊下に出た。
「校長先生はあの子が武くんに何を言ったかご存知ですか?」
律子は怒りがおさまらない。
「えぇ、聞きました」
「だったら…」
「山下先生…落ち着いて下さい」
「落ち着けません」
「落ち着きなさいっ」
「っ…」
強い意思を含んだ校長の声が律子を黙らせた。