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海鳴り
第9章 夕凪
「相沢くんは母親と話ができ、また必ず帰って来ると信じて疑わない。彼はそれに嫉妬と怒りを感じ、ずっと自分が聞いたり言われたりしてきた汚い言葉をぶつけてしまったんだと思います」
「……」
「非難する事は簡単です。…でもまだ彼は幼い、反省もしています。
我々は、突き放すのではなく気持ちを汲み取ってあげるべきではないでしょうか…。彼は相沢くんを押し返すだけで叩いてはいませんでしたよ」
「…はい」
律子は何も言えなかった。
片方だけを見て怒りに我を忘れ、慎吾を更に孤独へ追い詰めようとしていた自分の浅はかさを恥じた。
「申し訳ありませんでした」
「実は、私も怒鳴ったんですよ」
「えっ?」
律子は微笑んでいる校長の顔を見た。
「悪いものは悪いですからね、ちゃんと叱らないと。でも大切なのはその後です。……本当に悪いのは大人達ですよ」
本当にそうだ…
「山下先生」
「はい」
「お任せしてもいいですか?」
「え…」
「彼は相沢くんに謝りたいと言っています」
「…はい、承知しました」
律子は立ち上がり「ありがとうございました」と深く頭を下げて保健室へと向かった。
「……」
「非難する事は簡単です。…でもまだ彼は幼い、反省もしています。
我々は、突き放すのではなく気持ちを汲み取ってあげるべきではないでしょうか…。彼は相沢くんを押し返すだけで叩いてはいませんでしたよ」
「…はい」
律子は何も言えなかった。
片方だけを見て怒りに我を忘れ、慎吾を更に孤独へ追い詰めようとしていた自分の浅はかさを恥じた。
「申し訳ありませんでした」
「実は、私も怒鳴ったんですよ」
「えっ?」
律子は微笑んでいる校長の顔を見た。
「悪いものは悪いですからね、ちゃんと叱らないと。でも大切なのはその後です。……本当に悪いのは大人達ですよ」
本当にそうだ…
「山下先生」
「はい」
「お任せしてもいいですか?」
「え…」
「彼は相沢くんに謝りたいと言っています」
「…はい、承知しました」
律子は立ち上がり「ありがとうございました」と深く頭を下げて保健室へと向かった。