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海鳴り
第10章 高波
二人は風に煽られ、足元がふらついても離れなかった。
岸壁に打ち寄せて砕け散る波の音も、唸りを上げる風の音も怖くなかった。
相沢の温もりは冷えきった律子の心を温め、不安を消し去っていった。
今だけ
もう少しだけ…
雨の中で二人は何度も唇を合わせ、見つめ合った。
ずっと見つめていたいのに涙と雨のせいで相沢が見えない。
律子の瞼にキスをしながら優しく涙を啜る相沢の唇は、余計に律子を泣かせた。
律子が苦しげに喘ぐとキスを止めて優しく抱きしめ、相沢は律子の気持ちが落ち着くまで優しく、激しく、その腕で包み込んだ。
私一人が甘えてる…
「私、帰ります…」
律子は相沢の厚い胸を押し退けた。
「律子…」
「もう、ここへは来ません」
「……」
「もう平気です」
笑って見せた。
「律子…」
「それじゃあ、おやすみなさい」
背を向けて歩き出した。
平気なんかじゃない…
岸壁に打ち寄せて砕け散る波の音も、唸りを上げる風の音も怖くなかった。
相沢の温もりは冷えきった律子の心を温め、不安を消し去っていった。
今だけ
もう少しだけ…
雨の中で二人は何度も唇を合わせ、見つめ合った。
ずっと見つめていたいのに涙と雨のせいで相沢が見えない。
律子の瞼にキスをしながら優しく涙を啜る相沢の唇は、余計に律子を泣かせた。
律子が苦しげに喘ぐとキスを止めて優しく抱きしめ、相沢は律子の気持ちが落ち着くまで優しく、激しく、その腕で包み込んだ。
私一人が甘えてる…
「私、帰ります…」
律子は相沢の厚い胸を押し退けた。
「律子…」
「もう、ここへは来ません」
「……」
「もう平気です」
笑って見せた。
「律子…」
「それじゃあ、おやすみなさい」
背を向けて歩き出した。
平気なんかじゃない…