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海鳴り
第10章 高波
「ねぇ、美希ちゃんて本当にカズさんの子供かしら」
「どうなんだろうね」
えっ…
「根も葉もない噂するの止めたら?」
春子の声だった。
「だって…」
「ねぇ…」
律子は聞かなかった振りをしてその場を離れ、机の並びを整えたり黒板を消したりした。
「早く帰ろうよぉ」
「ママー」
「早くー」
「はいはいお待たせ、さあ帰るわよ」
「ごめんごめん、帰ろうね」
子供に急かされ、親たちは顔を見合わせながら教室を後にした。
カーテン越しに外を見ると、赤い車が校門を出て行くところだった。
静かになった教室でほっとため息をつく。
初めて見た真理子の姿が頭から離れない。
母親というよりも女を全面に打ち出しているような女。
すぐにも男の誘いに乗ってしまいそうなその雰囲気が律子には許せなかった。
和男さんはあの人より私を選ぶ
勝手に決めつけていた。
あんな人を和男さんが抱くわけない…
あんな
あんな淫らな人…
律子は相沢の上で妖しげに誘いをかける真理子の熟れた裸体を、頭の中で何度も打ち消した。
「どうなんだろうね」
えっ…
「根も葉もない噂するの止めたら?」
春子の声だった。
「だって…」
「ねぇ…」
律子は聞かなかった振りをしてその場を離れ、机の並びを整えたり黒板を消したりした。
「早く帰ろうよぉ」
「ママー」
「早くー」
「はいはいお待たせ、さあ帰るわよ」
「ごめんごめん、帰ろうね」
子供に急かされ、親たちは顔を見合わせながら教室を後にした。
カーテン越しに外を見ると、赤い車が校門を出て行くところだった。
静かになった教室でほっとため息をつく。
初めて見た真理子の姿が頭から離れない。
母親というよりも女を全面に打ち出しているような女。
すぐにも男の誘いに乗ってしまいそうなその雰囲気が律子には許せなかった。
和男さんはあの人より私を選ぶ
勝手に決めつけていた。
あんな人を和男さんが抱くわけない…
あんな
あんな淫らな人…
律子は相沢の上で妖しげに誘いをかける真理子の熟れた裸体を、頭の中で何度も打ち消した。