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海鳴り
第10章 高波
初めから真理子を知っていたら、相沢に近付きはしなかったのに…

真理子がずっとこの町にいたなら…


律子は己れの過ちに対する言い訳を真理子のせいにした。

けれども結局、そんな自分の醜さや未熟さに気が付いて、更に惨めさをつのらせていく。


こんな気持ちでは朝まで眠れない


海が見たくなった。

港へ行けば、潮の香りや波の音が自分を慰めてくれるだろう。
少なくともここにいるよりは。

貝殻を手に取りスニーカーを履いて外に出た。


夕凪だ…


町は静まりかえっている。


野良猫が擦り寄って来てニャ-と鳴いたが、「何もないの」と言われると、つまらなそうな顔をして律子を追い抜いて歩き出した。

その後ろを律子が歩く。

猫はバス通りを渡らずに道に沿って歩いていた。

月明かりの下、律子は貝殻を耳に当てながら猫の白い背中を追った。


後を付ける人の気配を感じたのか、不意に猫の姿が見えなくなった。

ハッとして辺りを見回すと相沢の家の傍に来ていた。


ここには来ないと決めたのに…


海側の出窓から僅かに明かりが洩れている。


和男さんの部屋…

もう寝ている時間だ




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