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海鳴り
第10章 高波
なぜまだ灯りが点いているのだろう

和男さんは暗くしないと眠れないのに

なぜまだ起きているのだろう

明日は船が出せる筈だ


なぜ

なぜ…


「…っ…」


たっぶりと肉付きのいい臀部を夫の目の前で揺らし、猫のように背中を反らせて誘う真理子の姿が…、そこにしがみついて顔を埋める相沢の姿が、律子の頭の中で勝手に動き出した。

赤い唇で舌舐めずりをしながら、そそり立つものを胸の谷間に挟み、嬉しそうに顔を上げる真理子。
深く呑み込み、夫に妖しく微笑みながら音を立ててしゃぶりつく真理子。
律子の事など忘れ、恍惚の表情で真理子の中に突き立て、狂ったように腰を振る相沢。

部屋の灯りが消えた


当たり前よ
夫婦なんだもの…


律子は深く息を吸って自分を納得させようとした。


カシッ!


貝殻を出窓に向かって投げ付けていた。

貝殻はサッシの角に当たって暗闇に消えた。


私…いったい何を…


律子は頭が真っ白になり、とっさにその場から逃げ出した。


バカな私

ばかっ

ばかっ!


もう

消えてしまいたい…




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