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海鳴り
第10章 高波
顔がひきつっていた。

バス通りを駆け抜け、右に曲がる。
早く家に逃げ込みたい。

誰かに見られていなかっただろうか

あんな事をするなんて…

振り返るのが怖い…


律子は恐怖を感じる程怯え、そのせいか足が上手く前に進んでくれない。

「…ぁ…」


律子はよたよたとつんのめり、両手をついて地面に倒れ込んだ。

ハァハァと息が切れる。


「…うぅッ…もういや…」


地面に尻をつき膝を抱えて泣き出した。


「…うぐッ…ウッウッ…」


誰かに見られても構わない

もうどうでもいい

最低だ

私なんて

最低の最低…



「ウッウッ…ヒクッ…グスッ…ぅぅっ…ヒクッ…」




「靴紐も結べねえのか」


「…っ…」


相沢が目の前にしゃがんで律子の靴紐を結んでいた。


「…な、なんで…ウグッ…ッ……なんで…」

「アザミで飲んでた」

「…ほ、ほんと?
…ヒクッ…ほん…と?…グスッ…」


目にいっぱい涙をためたまま、律子は相沢を見つめた。


「嘘はつかねぇ」


相沢の手が律子の頭をゴリゴリと撫でた。


「…ヒクッ…うんっ…ぅ、うんっ…ング…」


涙がよけいに溢れてきた。



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