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海鳴り
第2章 過去へ──出会い
「これあんたの家の鍵」

「ありがとうございました」

ドアの外で鍵を受け取った。


「冷蔵庫は冷やしておいた。中に刺身が入ってるから早く食べくれ」

「父ちゃんが今朝とった魚だよ」

「えっ」


夕食の事をすっかり忘れていた。


「あ、ありがとうございます」


相変わらず律子を見据える男にどぎまぎしながら礼を言った。


怖いのか親切なのか
どっちなの…?


「届いた荷物は中にある。電話は明日の午前中には繋がるそうだ」

「は、はい」

「あ」

「えっ?」

「まぁ大丈夫だろう」

「な、何がですか?」


律子は怖々質問してみた。


「備え付けの懐中電灯が壊れてる」

「えぇーーっ!」

「………」

「す、すみません」


冷たい視線に思わず謝った。


「父ちゃん、家にあるのを一つあげたら?」

「そうだな、もう店も閉まってるし…」

「…あの、お借りします」


武くん、ありがと…


「後で届けるから」


そう言い残し、武の手を引いた男は背中を向けた。



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