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海鳴り
第10章 高波
「…何を考えているんですか」
相沢の抱かれて微睡む律子は、さっきから黙ったままのその顔を覗き込んだ。
「律子…」
「はい」
「全部置いていけ」
「え?」
「俺と思い出、…あんたの気持ちも全部、この町に置いて行け」
理解出来ない律子の髪を優しく撫でて手のひらが頬を覆う。
「そしてもう二度とこの町には戻って来るな」
「…ッ…」
涙が耳の方へと流れていく。
「…ぃ、や…だ…」
「俺が引き受ける…。
あんたは前だけを見て進むんだ」
「…や…」
律子は何度もイヤイヤをした。
「よく聞くんだ、……律子、あんたが帰る町には俺はいねぇ…、どこかはしらねえが新しい学校の子供達があんたの教え子になるんだろ。
グズグズしてはいられねえ筈だ」
「グスッ…」
「だから振り返るな」
「ヒクッ…か、和男さんは…?…ヒクッ…和男さん…は?」
「俺は大丈夫だ、ふふっ…武じゃねえが、男だからな…」
「だって…、だって…」
「俺は漁師だ…。
あんたは自分の居場所で幸せを見つける…、俺は…、俺はあんたが幸せにしてると信じてここで生きる」
相沢は律子を優しく抱き締めた。
「こんなに可愛い女を俺のものにできたんだ、俺は幸せだ…悔いはねえ」
相沢の抱かれて微睡む律子は、さっきから黙ったままのその顔を覗き込んだ。
「律子…」
「はい」
「全部置いていけ」
「え?」
「俺と思い出、…あんたの気持ちも全部、この町に置いて行け」
理解出来ない律子の髪を優しく撫でて手のひらが頬を覆う。
「そしてもう二度とこの町には戻って来るな」
「…ッ…」
涙が耳の方へと流れていく。
「…ぃ、や…だ…」
「俺が引き受ける…。
あんたは前だけを見て進むんだ」
「…や…」
律子は何度もイヤイヤをした。
「よく聞くんだ、……律子、あんたが帰る町には俺はいねぇ…、どこかはしらねえが新しい学校の子供達があんたの教え子になるんだろ。
グズグズしてはいられねえ筈だ」
「グスッ…」
「だから振り返るな」
「ヒクッ…か、和男さんは…?…ヒクッ…和男さん…は?」
「俺は大丈夫だ、ふふっ…武じゃねえが、男だからな…」
「だって…、だって…」
「俺は漁師だ…。
あんたは自分の居場所で幸せを見つける…、俺は…、俺はあんたが幸せにしてると信じてここで生きる」
相沢は律子を優しく抱き締めた。
「こんなに可愛い女を俺のものにできたんだ、俺は幸せだ…悔いはねえ」