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海鳴り
第11章 引き潮
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本格的な夏の訪れを示すように、青空の向こうに見える水平線から、沸き上がるような入道雲が見える。

照り付ける陽射しに思わず目を伏せながら、律子はバスを待っていた。

足元にはここへ来た時と同じ旅行カバンがある。



全てが元に戻っていく

ここからいなくなるのは私だけ



「律子先生ーーっ」


子供の声がする。


振り向くと、バス通りをこちらに渡ろうと左右を確認している武と、朝の登校メンバーが手を振っていた。


「みんな…」


「行こう」と頷き合って道を渡って来る。


「来てくれたの?
先生見つかっちゃったな」

「みんな来るよ、ほら」


一人ふたり三人と道を渡る子供の中に父兄が混じっている。
そればかりか合唱隊の顔触れや校長、同僚達が次々と集まってきた。

バス停付近が人で埋まりだした。


「先生、見送りぐらいさせて貰いますよ」

「亜紀さん…、春子さんも」

「うふふ、お店放り出して来たんです、あはは…」

「山下先生、これ我々職員一同と保護者の皆さんから」


校長が花束を差し出した。


「まあ…、何だか…あの…」

「つべこべ言わずに受け取って」

「あ、ありがとうございます」

「律子先生、お疲れさまでした」

「お疲れさまでした」
「ありがとうございました」



拍手が起こった。




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