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海鳴り
第11章 引き潮
「り、律子先生ーっ」

「あ、なんだ直也まできた」

「ひでぇな春子さんは、…あ、律子先生、いつぞやはどうも…へへっ」


息を切らした直也が頭を掻いた。


「俺、立派な漁師になりますから…あっ…」


春子が直也を押し退けた。


「あんたはどうでもいいのよ教え子じゃないんだから、ほらバスが来た、翼ーっ、先生にちゃんとご挨拶しなさい」

「あの、直也さん…
立派な海の男になって下さい」




和男さんを
お願いします




「おぉ! まかせとけっ」


バシッ…



「イテテ…」

「あはははは」

「直也も春子さんにはかなわないねぇ」

「直也兄ちゃんどうしたの」

「なんでもねぇ」

「あははは…」


賑やかなバス停にゆっくりとバスが停車してプシューッという音と共にドアが開いた。



「おいおい全員乗るつもりか?」

「おや、ヒロさんのバスだ、丁度いい、ゆっくりして行きなよ」

「そうしてよ」

「バカな事を、で、お客は何人?まさか…」

「ひとり!」
「一人」
「一人だよ」

「えー、またかよ、いつもいつもまったく…、また一人で貸し切りだ」

「何言ってるの、いつもは無人じゃないか」


笑い声が上がった。




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