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海鳴り
第12章 それから
「一人で漁に出る父を、見送ったのは母でした」

「………」

「母の話では、少し雲行きが怪しかったけれど父は『必ず帰ってくる』と言い遺して出港したそうです。
……でも、その後暫くして海鳴りが聴こえてきたと…」

「海鳴り…」



ゴォーーーーー……



「母は家で父が引き返して来るのを待っていたようなんですが、なかなか戻らないので港に行ってみると、船は次々と戻って来るのに興和丸だけが戻って来なかった…」


律子の耳には忘れる筈のない海鳴りと、激しく吹き荒れる風と雨の音が聴こえていた。



ドォーンドォーン……



荒れ狂う海の波間に、木の葉のような一艘の船は何を見ていたのだろうか


「取り乱す母の様子に押されて組合の方々がすぐに救助要請を出したんですが…、あまりにも天候が悪くて…」

「和男さ…、お父さんは戻って来なかった」

「……はい。
2日後に転覆している船が見つかって、でも父は、見つかりませんでした」

律子は俯き貝殻を強く握り締めた。

心はあの頃の痛みを、必死に足掻いていた過去の記憶を、絞り出そうとするかのようにギシギシと音を立てた。



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