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海鳴り
第12章 それから
「武くん…」
「律子先生が波浜からいなくなった後も、母は度々いなくなりました。
妹を置いて行くようにもなりました。
2ヶ月とか半年とか…」
「そうだったの…」
「僕が結婚したら、あんな夫婦にはなりたくないな…」
武は苦笑いを堪え、切なそうに律子に訴えた。
「父がいなくなってあんなに取り乱すなら、ずっと傍にいたらよかったんだ…、今さら…今さら家で待っていてもしょうがないのに…」
「…っ…」
「母は馬鹿だ…」
一度だけ目にした真理子の姿が心を過る。
「父は、僕と妹と祖母の為に黙々と生きていました。
僕は…、結婚しようと思うようになってからやっと、何も語らないからこそ深かった父の想いの欠片だけでも、先生に届けてあげたいと思いました」
和男さん…
ずっとこの貝殻と一緒に
律子は貝殻を撫でながらはらはらと涙を溢した。
「父との思い出がありますか?」
「……えぇ…」
「よかった」
「武くん…」
「最近になってよく思い出すんです。
いつも仏頂面だった父が、あの頃だけやけに弾んでたなぁって…、あはは…」
「そうだった?」
「えぇ…、一番好きな父の姿です、よく笑ってましたから…。
持ち帰った音読カードをやけに真剣に眺めてたな」
「律子先生が波浜からいなくなった後も、母は度々いなくなりました。
妹を置いて行くようにもなりました。
2ヶ月とか半年とか…」
「そうだったの…」
「僕が結婚したら、あんな夫婦にはなりたくないな…」
武は苦笑いを堪え、切なそうに律子に訴えた。
「父がいなくなってあんなに取り乱すなら、ずっと傍にいたらよかったんだ…、今さら…今さら家で待っていてもしょうがないのに…」
「…っ…」
「母は馬鹿だ…」
一度だけ目にした真理子の姿が心を過る。
「父は、僕と妹と祖母の為に黙々と生きていました。
僕は…、結婚しようと思うようになってからやっと、何も語らないからこそ深かった父の想いの欠片だけでも、先生に届けてあげたいと思いました」
和男さん…
ずっとこの貝殻と一緒に
律子は貝殻を撫でながらはらはらと涙を溢した。
「父との思い出がありますか?」
「……えぇ…」
「よかった」
「武くん…」
「最近になってよく思い出すんです。
いつも仏頂面だった父が、あの頃だけやけに弾んでたなぁって…、あはは…」
「そうだった?」
「えぇ…、一番好きな父の姿です、よく笑ってましたから…。
持ち帰った音読カードをやけに真剣に眺めてたな」