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海鳴り
第2章 過去へ──出会い
段ボールの中からごそごそと真空パック入りのご飯を取り出す。


「ありがとう、お母さん」


律子は独り言を言い、娘にいらないとうるさく言われながらもカップ麺やレトルトカレー、缶詰、調味料などを詰め込んでいた母親の姿を思い出した。


ごめんなさい


「電話が繋がったら連絡しなくちゃ」


しんみりしそうな気持ちを押さえつけ、レンジでご飯を温める。


「おいしい…」


新鮮な刺身に感動しながら、律子はふと相沢の笑顔を思い出していた。


「ずっと笑ってればいいのに、頑固おやじ」


律子は世話になりながら文句を言っている自分をすぐに許し、食器を片付けながらふと、キッチンの足元の床が一部、きれいに張り替えられている事に気がついた。


「ここも…あ、あそこも」


ねじり鉢巻の相沢とあの直也という元不良の男が修理してくれている姿を思い浮かべると、気持ちが温かくなってきた。

雨粒が窓ガラスを叩く音がする。
風が強いのか、電線がヒュ-ヒュ-と音を立てていた。

律子は大きな紙包みを開けて寝具類を取り出すとまずはベッドを整えた。

雨音が激しさを増していった。


早く布団に潜りたい…



ドンドンドンドン…



誰かがドアを叩いた。




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