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海鳴り
第12章 それから
「朝になって、『なんか寝言言ってなかったか』って聞いてくるから、真理子って聞こえたって言ってあげたよ…、アハハ…真理子はアタシの名前、ふふ…」


律子はだんだん真理子に惹かれていくような不思議な気持ちになっていった。


「誰の名前を呼んだって構わない、文句言う資格ないしさ、それなのに気にしてる旦那に恐る恐る聞いてみたんだ……、あれはアタシの最後の掛けだった…」

「何を聞いたんですか?」

「うわ言で名前を呼ばれるくらいなんだから、これからはずっと傍にいようかなって…」

「…まあ…」

「そしたら、『あぁ、そうしろ』って…。
もっと早く言えばよかった…、それから1年も経ってなかったのに…、やっと居場所が見つかったのに…」


真理子の目が潤んで見えた。

タバコを揉み消し、吸い殻を携帯用の灰皿に入れる。


「海は汚せないからね」


二人は黙って海鳴りを聴いた。

律子の耳にはもう、相沢に呼ばれているようには聴こえなかった。

ここは真理子の居場所だった。




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