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海鳴り
第3章 ぬくもり
律子のそばにしゃがんでいた相沢は呆気に取られて一瞬怯んだものの、律子の目がしっかりと自分を見ている事にほっとして「ふっ…」と息を吐いた。


「大丈夫か?」

「こんな事なんでもありません、びっくりしただけです」


めそめそしている場合じゃない、保護者に、しかも気難しそうな相沢にみっともない姿をいつまでも晒しておくわけにはいかない。

"腰かけ"じゃしょうがない、と思われたくない


「明日、玄関のチャイムを取り替えるから」

「えっ?」

「それまでは簡単にドアを開けるんじゃねえぞ」


相沢が鋭い目付きで言った。


「でも…、お世話になってばかりで」

「いいんだ…。ここら辺は酔っ払いがしょっちゅううろつくから。
これ以上あんたに何かあったら、ここがいやな思い出だけの町になっちまう」


相沢の優しさが垣間見えた。


「ありがとうございます」


いろんな事があった今日の締めくくりがさっきの悪夢ではなく、このぶっきらぼうな男の温かい言葉でよかった


律子の心は落ち着きを取り戻していた。

いっそう激しくなった風が窓ガラスに雨を打ち付け、電線は休む事なく高音のうなり声を上げていた。



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