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海鳴り
第3章 ぬくもり
律子の背中に片腕を回し、律子を抱えながら前屈みになった相沢はお姫様抱っこのように律子を抱き上げた。


「な、何をするんですっ…離して、…は、離さないで、こ、こわい、落とさないで…」


律子は両手で相沢の首にしがみついた。


「結構重いな。」

「早く下ろしてくださいっ」

「く、首を締めるのはやめろ」


二人の頬が触れ合った。


「ご、ごめんなさい」

「今下ろすからじっとしてろ、魚みたいに跳ねんじゃねえぞ」

「は、はい…」

「よし」



うそ…

初めてのお姫様抱っこの相手がこの、頑固おやじ…



暗い中、ゆっくりと足元を確かめながら大事そうに抱えた律子の躰を腰からそっと床に下ろした相沢に、律子は微かな安心感を抱いた。


「大丈夫か?」

「はい…」

「よし」


相沢は律子の背中から腕を離す時、武にそうしたように頭をゴリゴリと撫でた。


「………」


黙っている律子の傍に座り手探りで懐中電灯を探しあてる。

そしてその灯りを動かし床に落ちていたバスタオルを見つけると、相沢はまた律子の肩にそっと掛けた。



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