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海鳴り
第4章 さざ波
「……こんにちは」

「あぁ」


相沢は相変わらずニコリともしない。


「父ちゃん、ちゃんと挨拶するんだよ、こんにちは、って」


相沢は一瞬ばつの悪そうな顔をしたものの「こんにちは」と低く言ってから武を見た。

にっこりと武が笑う。

フッと相沢が鼻で笑う。

二人の様子を見て、律子の気持ちに少し余裕ができた。


「昨日は…、いろいろとありがとうございました。…あの、本当にお願いしてもいいんですか?」

「いいんだよ! ね、父ちゃんっ」


武が得意気に言う。


「あぁ、いいんだ」


相沢は持ってきた工具箱と小さな段ボールをドアの外に置き、中を開けてチャイムの修理に取り掛かった。

その姿を見つめてしまわないように目をそらせた律子は、垣根の向こうで石蹴りを始めた武に目がいった。


「ねぇ、武くん」

「はーい」


武が飛んできた。


「先生をスーパーまで連れてってくれない? この町の事まだよくわからないの」

「うん、いいよ。父ちゃん行ってもいい?」

「あぁ、気をつけてな」

「うん! やったー」


武がピョンピョン跳ねた。


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