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海鳴り
第4章 さざ波
律子は財布を小さなトートバッグに入れて持ち、平静を取り繕いながらスニーカーを履いた。
手を止めて自分を見つめる相沢の視線が胸を刺す。
早く逃げ出したい…
「ちょっと武くんをお借りします」
「あぁ、頼む」
「武くん、お待たせしました。」
「うん!」
律子は相沢の横を通り過ぎ武に近づいた。
「ちょっと待った」
「は、はい」
律子は驚き振り向きもせずに固まった。
「靴の紐がほどけてる」
「えっ」
「あ、律子先生、靴紐踏んづけてるよ」
「紐も結べねぇのか」
「む、結べます」
律子が言い終わるより早く、相沢は律子の前に回り込み足元に屈んでいた。
「あ…」
「蹴るなよ」
なぜこの人は何事もなかったかのように…
「僕も結べるよ」
律子を見上げ、手を繋いでぶらぶらと振りながら武が笑う。
「えらいわね」
何でもない事…?
「よし、いいぞ」
相沢は立ち上がり律子を一瞥すると、また玄関に戻り修理を始めた。
「ありがとうございます」
「律子先生いこっ…、父ちゃん行ってきまーす」
手を振る武に振り向き、相沢は左手を上げて口元を緩めた。
手を止めて自分を見つめる相沢の視線が胸を刺す。
早く逃げ出したい…
「ちょっと武くんをお借りします」
「あぁ、頼む」
「武くん、お待たせしました。」
「うん!」
律子は相沢の横を通り過ぎ武に近づいた。
「ちょっと待った」
「は、はい」
律子は驚き振り向きもせずに固まった。
「靴の紐がほどけてる」
「えっ」
「あ、律子先生、靴紐踏んづけてるよ」
「紐も結べねぇのか」
「む、結べます」
律子が言い終わるより早く、相沢は律子の前に回り込み足元に屈んでいた。
「あ…」
「蹴るなよ」
なぜこの人は何事もなかったかのように…
「僕も結べるよ」
律子を見上げ、手を繋いでぶらぶらと振りながら武が笑う。
「えらいわね」
何でもない事…?
「よし、いいぞ」
相沢は立ち上がり律子を一瞥すると、また玄関に戻り修理を始めた。
「ありがとうございます」
「律子先生いこっ…、父ちゃん行ってきまーす」
手を振る武に振り向き、相沢は左手を上げて口元を緩めた。