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海鳴り
第4章 さざ波
律子は卵やハム、肉、野菜など一人分の食材を3日分程カゴに詰め込んだ。


「武くん、アイス決まった?」

「僕これにする」


バニラアイスを持って武がにこにこ近寄って来た。


「いいわよ、ここに入れて。…お父さんは何が好きかしら?」


この暑さの中、汗だくで作業をしている相沢の姿が目に浮かぶ。


「父ちゃんはビールが好きだよ」

「どのビールか知ってる?」

「うんっ」


武に案内されて、冷えた缶ビールが並ぶケースから5缶をカゴに入れた。


「律子先生…」


男の声に呼ばれて振り向くと、そこに直也が立っていた。


「…っ…」

「直也兄ちゃんだ!」


頬が青く腫れている。

律子は慌てて逃げようとしたが買い物カゴを掴まれてしまった。


「ちょっ、ちょっと待って…、謝りますから」


かしこまった言葉遣いに律子は立ち止まった。


「昨日は、本当にすみませんでしたっ」


直也は最敬礼をしたまま動かない。


「許してもらわないと俺、親方に使ってもらえなくなるんです」

「えっ?」

「漁師目指して修行中なんで…」


頭を下げたまま直也が言った。




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