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海鳴り
第4章 さざ波
「父ちゃんただいま」

「よぉ、重そうだな武」


一仕事終えたらしい相沢が、首に掛けていたタオルで額の汗を拭く。


「こんなの平気だよ」


レジで袋を二つに分けてもらった時、その重い方を持つと言い張る武は 「男だねぇ」と翼の母親に後押しされ、どうにかここまで男を通してきた。


「父ちゃんにビール買ってきたよ」


武は相沢の足元にやっと荷を下ろし、ごそごそと缶ビールを取り出した。


「お、丁度飲みたかったんだ」


二人の様子を黙って見ていた律子に相沢が言った。


「ありがとう、すまねえな」


首に掛けたタオルの間から覗く首筋に汗が一筋流れ、律子の視線とともにランニングシャツの胸元へと吸い込まれた。


「僕アイスたーべよっと、いっただきまーす」


「っ、…はい召し上がれ…うふふ…。
あの、支払いは直也さんが…」


律子のTシャツの背中にも汗が伝う。


「あいつに会ったのか」


相沢の目つきが律子を緊張させた。


「はい、偶然お店の中で」

「で?」

「えっ?」

「………」

「あ、あぁ、必死に謝っていました」

「で?」

「私…、本当にもう何でもないので、謝罪を受け入れました」


まるで尋問されているような気分になってくる。



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