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海鳴り
第5章 うねり
二人はなぜかいつも以上に落ち着きがない。
やけにそわそわしてニヤニヤと顔を見合わせている。


「………」


律子はふと垣根に目をやった。


「………」


小さな躰を屈めて隠れている3つの影が透けて見える。


やっぱり…


律子は武と翼が「あっ」と言うより早く垣根の外側に飛び出した。


「おはよっ!」

「わーっ」
「うわっ…」
「きゃー!」


尻もちをつきながら賑やかに子供達が笑う。


「あはは、バレたー」
「イテテ、あはは…」
「もう~」

「あはは、諸君、先生は何でもお見通しよ」


駆け寄ってきた武と翼が舌打ちしながら悔しがった。


「ちぇっ、上手くいくと思ったのにな」

「おどろかし作戦失敗だ」

「ほら、みんな立って、…行くわよっ」

「はーい」


律子を先頭に5個のランドセルが後に続く。

輪になり、はぐれてまたくっついて、律子を中心に賑やかなカタマリが移動する。


「ねぇ律子先生、今日の家庭訪問、翼くんちの次は僕んちだよね」


律子を見上げて武が言う。


「そうよ、お邪魔します」

「今日で家庭訪問おわり?」

「そう、翼くん、お母さんのお仕事は大丈夫かな?」

「大丈夫だよ、交代してもらえるって」

「そう、よかった」




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