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海鳴り
第5章 うねり
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翼の家を出て、律子はバス通りに面した相沢の家に向かっていた。
相沢とは幼なじみで同級生だったという翼の母春子は、思わず頼りたくなるような懐の深さを感じさせ、人間味のある温かい人物だった。
夫は相沢と同じ漁師で家族ぐるみの付き合いらしく、武の事も気にかけているようだった。
「武くんは母ちゃんを待ってるんだから、カズさんも別れるわけにはいかないんだろうねぇ…、ばあちゃんの面倒も見なきゃいけないし…」
武を不憫に思う半面、相沢の事も気にかけていた。
家庭にはいろいろな事情があり、一つ一つを全て把握する事はできない。
けれども子供達に何か変化が見られた時に、ある程度の事情を知っていれば早く対処できる事もある。
律子はあまり立ち入るつもりはなかったが武の生活面が少し気になった。
調査表に手書きされた地図を見ながらバス通りを歩き、暫く行くと左手の路地に『相沢』と書かれた表札を見つけた。
二階建ての家を見上げ、緊張気味に玄関のチャイムを鳴らす。
「………」
もう一度鳴らす。
「………」
「あぁ、あんたか」
後ろから声がした。
驚いて振り向くと、レジ袋から溢れる程たくさんのお菓子を買い込んだ相沢が立っていた。
翼の家を出て、律子はバス通りに面した相沢の家に向かっていた。
相沢とは幼なじみで同級生だったという翼の母春子は、思わず頼りたくなるような懐の深さを感じさせ、人間味のある温かい人物だった。
夫は相沢と同じ漁師で家族ぐるみの付き合いらしく、武の事も気にかけているようだった。
「武くんは母ちゃんを待ってるんだから、カズさんも別れるわけにはいかないんだろうねぇ…、ばあちゃんの面倒も見なきゃいけないし…」
武を不憫に思う半面、相沢の事も気にかけていた。
家庭にはいろいろな事情があり、一つ一つを全て把握する事はできない。
けれども子供達に何か変化が見られた時に、ある程度の事情を知っていれば早く対処できる事もある。
律子はあまり立ち入るつもりはなかったが武の生活面が少し気になった。
調査表に手書きされた地図を見ながらバス通りを歩き、暫く行くと左手の路地に『相沢』と書かれた表札を見つけた。
二階建ての家を見上げ、緊張気味に玄関のチャイムを鳴らす。
「………」
もう一度鳴らす。
「………」
「あぁ、あんたか」
後ろから声がした。
驚いて振り向くと、レジ袋から溢れる程たくさんのお菓子を買い込んだ相沢が立っていた。