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海鳴り
第5章 うねり
黒いVネックのTシャツが相沢を落ち着いた男に見せる。
掻き上げるように後ろに流した前髪が少し額に掛かり、太い眉の下の瞳は歓迎の色も見せずに律子を眺めた。


「あ、あの…家庭訪問に伺ったんですけど…」


律子がそう言うと「あぁ」と言いながら、相沢は鍵の掛かっていない玄関の引き戸を開けた。


「どうぞ」

「…お邪魔します」


二階に上がる階段を横目で見ながら相沢の後に続く。

引き締まった広い背中だった。

リビングのソファに案内された律子は「失礼します」と言って掛けながらきちんと片付けられた部屋を見渡した。

庭には洗濯物が干されている。


「………」


雑然とした室内を想像していた律子は、相沢の意外な一面を見た気がした。


ぶっきらぼう
威張りんぼ
自己ちゅー

きれい好き…


対面式キッチンの向こう側にいる相沢がなかなかこちらにこない。


「あのう、お構い無く…」


落ち着かない律子をよそに、相沢は麦茶とコーラのペットボトル、氷の入ったグラス2つを両手に持ち、大きめの皿を脇に挟んで持って来た。

目の前のテーブルに並べながら律子を見る。




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