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海鳴り
第5章 うねり
「…なんだよ、あんたも刺身がよかったのか」

「………」


理解不能…


律子はペースを乱されないように気をつけようと強い口調になった。


「相沢和男さん」

「………」

「私はお菓子やお刺身よりもお話がしたいんです…、どうぞお座りください」

「…わかった」


律子の物言いに押されたのか相沢は律子の正面にドッカと腰を下ろし、ゴクゴクと麦茶を飲んで大きく息を吐いた。

胡座をかいて腕を組み律子を見据える相沢に、緊張を悟られまいとごく自然に視線を合わせ、冷静を装って静かに息を吸い込む。


「漁師さんのお仕事は朝早いんですよね」


律子は春子に聞いた事を思い出しながら相沢に話し掛けた。


「あぁ、4時には船を出す」

「武くんは自分で起きるんですか?」

「あぁ、あいつは自分で起きて時間になったら学校に行く」

「がんばり屋さんですね」

「あぁ」

「武くんの音読を聞いた事がありますか?」

「……オンドク?」

「声に出して国語の教科書を読むんです、毎日の宿題です」

「ねぇな」

「音読が済んだら三角、まる、二重まるで親御さんに印を付けてもらうカードがありますから…」

「聞いてるうちに寝ちまうかもしれねぇ…夜の7時には寝るからな」

「聞いてあげてください」



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