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海鳴り
第5章 うねり
「……岸本さん…」
見られてはならない自分を春子に見られてしまったような気がした。
「どうしたんですか、考え事?」
「あ、いえ別になんでも…」
「…そうですか。…先生ほら、夕日が綺麗ですよ」
春子の視線を追い、律子は山の方を見つめた。
雲の切れ間から広がる陽の光が辺りを赤く染め、なだらかな山の稜線を黒くくっきりと浮かび上がらせている。
「本当にきれい…」
「得した気分でしょう? 」
「えぇ、ホントに…」
春子と顔を見合わせて笑い少し気分が和らいだ。
「あの…」
「はい、なんでしょう」
春子が優しく問い返す。
「一人でも入りやすいスナックってありますか?」
律子は眠れそうもない夜を、部屋で過ごす気にはなれなかった。
「そうねぇ…『アザミ』ぐらいかな?」
「アザミ…」
「えぇっと…、スーパーの横の路地に入って少し歩くと右手にくすり屋さんがあるんですけどね、その隣…」
「あぁ、わかります」
確か小さな居酒屋も数件並んでいたような気がする。
「ママがいい人だから安心ですよ」
「ありがとうございます」
見られてはならない自分を春子に見られてしまったような気がした。
「どうしたんですか、考え事?」
「あ、いえ別になんでも…」
「…そうですか。…先生ほら、夕日が綺麗ですよ」
春子の視線を追い、律子は山の方を見つめた。
雲の切れ間から広がる陽の光が辺りを赤く染め、なだらかな山の稜線を黒くくっきりと浮かび上がらせている。
「本当にきれい…」
「得した気分でしょう? 」
「えぇ、ホントに…」
春子と顔を見合わせて笑い少し気分が和らいだ。
「あの…」
「はい、なんでしょう」
春子が優しく問い返す。
「一人でも入りやすいスナックってありますか?」
律子は眠れそうもない夜を、部屋で過ごす気にはなれなかった。
「そうねぇ…『アザミ』ぐらいかな?」
「アザミ…」
「えぇっと…、スーパーの横の路地に入って少し歩くと右手にくすり屋さんがあるんですけどね、その隣…」
「あぁ、わかります」
確か小さな居酒屋も数件並んでいたような気がする。
「ママがいい人だから安心ですよ」
「ありがとうございます」