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海鳴り
第5章 うねり
時折後ろのテーブル席から賑やかな笑い声が上がり、ピアノのBGMが途切れたが、律子はその楽しげな声の中にいた方が気が紛れた。
一人で飲みに出歩くのは初めての事だった。
正面のガラス棚に並んだボトルには、それぞれ名前が書かれた札が下げられている。
「……」
律子は無意識に『相沢』の名前を探しながらビールを飲み、一通り目を通して無い事がわかると、今度は『和男』『カズさん』 という文字を探した。
見つからない名前にほっとしながら肩肘を付き、二杯目のグラスを傾けた頃、扉が開く音がした。
「ママ、ビールちょうだい」
入口に近いカウンターに腰掛けながら、男が律子の方を見た。
「律子先生…」
直也だった。
「あ、どうも…」
あまり会いたくない人物に出会した。
「あら直也、知り合いなの?」
亜紀が不思議そうに口を挟む。
「新しい先生だよ、波浜小の」
「まあ、そうだったんですか…」
亜紀の言葉に「はい」と頷く律子の傍に、直也が嬉しそうに近寄って来た時、再び扉のベルがカランコロンと来客を告げた。
「あら、今夜で何度めかしら、カズさん、まだ人捜し?」
一人で飲みに出歩くのは初めての事だった。
正面のガラス棚に並んだボトルには、それぞれ名前が書かれた札が下げられている。
「……」
律子は無意識に『相沢』の名前を探しながらビールを飲み、一通り目を通して無い事がわかると、今度は『和男』『カズさん』 という文字を探した。
見つからない名前にほっとしながら肩肘を付き、二杯目のグラスを傾けた頃、扉が開く音がした。
「ママ、ビールちょうだい」
入口に近いカウンターに腰掛けながら、男が律子の方を見た。
「律子先生…」
直也だった。
「あ、どうも…」
あまり会いたくない人物に出会した。
「あら直也、知り合いなの?」
亜紀が不思議そうに口を挟む。
「新しい先生だよ、波浜小の」
「まあ、そうだったんですか…」
亜紀の言葉に「はい」と頷く律子の傍に、直也が嬉しそうに近寄って来た時、再び扉のベルがカランコロンと来客を告げた。
「あら、今夜で何度めかしら、カズさん、まだ人捜し?」