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海鳴り
第5章 うねり
律子を先頭にぞろぞろと列が移動する。
「律子先生ー」
武が列の後ろからバタバタと駆けよって来た。
「なあに?」
「ねえ、先生これ見て!」
嬉しそうに律子を見上げ、武が何かを広げて見せた。
「まあ…」
立ち止まった律子が受け取ったものは、武の音読カードだった。
「父ちゃんがね、よく出来た、って印をつけたんだよっ」
武はさも嬉しそうにランドセルを揺らして跳ねた。
日付の下に印を付けられるように表になっている音読カード。
その9月のページいっぱいに大きくて不恰好な赤い花まるが一つ、マジックで力強く書かれていた。
「………」
「すごいでしょ」
「す、すごいわ…」
律子の胸が熱くなった。
「見せて見せて」
「僕にも」
「あたしにも見せて」
みんなで武のカードを覗き込む。
「わ~すげえ」
「それインチキじゃないの?」
「俺も花まるがいいな」
「インチキじゃないよ、僕、毎日読むんだもん。昨日は父ちゃんも読んだよ」
えっ…
「へー、武くんのお父さん何を読んだの?」
「なになに?」
次々と質問が飛びかい、花まるを見つめていたみんなの目が武を見つめた。
「律子先生ー」
武が列の後ろからバタバタと駆けよって来た。
「なあに?」
「ねえ、先生これ見て!」
嬉しそうに律子を見上げ、武が何かを広げて見せた。
「まあ…」
立ち止まった律子が受け取ったものは、武の音読カードだった。
「父ちゃんがね、よく出来た、って印をつけたんだよっ」
武はさも嬉しそうにランドセルを揺らして跳ねた。
日付の下に印を付けられるように表になっている音読カード。
その9月のページいっぱいに大きくて不恰好な赤い花まるが一つ、マジックで力強く書かれていた。
「………」
「すごいでしょ」
「す、すごいわ…」
律子の胸が熱くなった。
「見せて見せて」
「僕にも」
「あたしにも見せて」
みんなで武のカードを覗き込む。
「わ~すげえ」
「それインチキじゃないの?」
「俺も花まるがいいな」
「インチキじゃないよ、僕、毎日読むんだもん。昨日は父ちゃんも読んだよ」
えっ…
「へー、武くんのお父さん何を読んだの?」
「なになに?」
次々と質問が飛びかい、花まるを見つめていたみんなの目が武を見つめた。