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海鳴り
第6章 海鳴り
律子は小走りに校門を脱けると、そのまま真っ直ぐ自宅に向かって歩き出した。


「あ、律子先生っ…」


前から武が駆けてきた。


「どうしたの武くん?」


息を切らせて律子を見上げ武が不安な顔で言った。


「僕、おばあちゃんとこに…行くの」



あぁ、海鳴りだから…



「お泊まり?」

「うんっ」

「いいわね、一人で行けるの?…先生も一緒に…」

「大丈夫だよ、いつも行ってるから、…おうちは学校の裏だから、近いよ」

「そう、気をつけてね。明日はどこかにお出掛け?」


武が首を振る。


「父ちゃんが風邪ひいてるから…」


えっ…


律子が慌てて聞いた。


「熱は?」

「わかんない。…僕、うつるからばあちゃんちに行けって言われた」

「そう…、お父さん大丈夫かしら」

「大丈夫って言ってたよ、薬を飲んで寝てる」

「そう…」


武は足踏みをしながら律子を見つめ、両手で耳を押さえた。


「僕、怖いからもう行くね」

「あ、武くん…」

「先生も早く帰ってね、天気が悪くなるよ、じゃあ、さよなら」


武はくるっと背を向けると校門を左に曲がって駆けて行った。



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