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海鳴り
第6章 海鳴り
律子は居ても立ってもいられず、冷蔵庫をあさって残っている食材を探した。

大根、人参、玉ねぎ、しめじ、鶏肉……なんでも小さく刻む。
出汁を取り、残っていたご飯と一緒に火に掛け、最後に溶き卵を入れて雑炊を作った。

自分が寝込んだ時に母が作ってくれたものだった。
ふた付きの容器に入れて袋に詰める。


早くしないと嵐になってしまう…


律子はジーンズにセーター、その上からコートを羽織って外に出た。



ゴォーーーー……



海鳴りが風の音と混ざり不気味さを増していた。


「………」


律子は海に向かって歩いた。

時折強い風に押し戻されそうになりながら、前に進んだ。

夜7時で閉店したスーパーの看板の明かりを頼りに歩き、バス通りに出て左に曲がる。

外灯の少ないその道を律子は怯えながら歩いた。
港の明かりが停泊している漁船を照らし、上下に大きく揺れているのが見える。

迫り来る海からのどよめきが律子を威嚇しているようだった。



怖くない
海鳴りなんか…


逢いたい
逢いたい

逢いたい…



大粒の雨が降りだした。

大波が、漁港の奥から海に突き出した突堤にぶつかり、飛沫をあげて高く飛び散っているのが見える。


風が鳴いていた。

律子も泣きたかった。




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