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第6章 海鳴り

「あ、あの…」

「……、学校の、先生が……お…男一人の家に…いったい…、何の用だ…、夜這いに…きたのか…」


壁に片手をつき、肩で息をしながら相沢は律子の顔を覗き込んだ。


「違います…」


相沢はよろよろと廊下の奥へ行き、バスタオルを持って戻って来た。


「いったいなんでここに…」

「すみません…、あの、武くんに聞いて…」


律子をちらりと見つめてバスタオルを渡すと、相沢はリビングの奥の襖を開けて中に消えた。



迷惑かもしれない…



髪やジーンズを押さえるように拭き取りながら律子は来てしまった事を後悔しはじめた。

それでもなんとか気を取り直し、持って来た包みを手にそっと襖の奥を覗いた。


「………」


薄暗い和室に敷かれた布団の中で、相沢は律子に背を向けて横になっていた。

海側の出窓を叩く雨音が風の強さを思い出させる。


「あの、熱は…」

「ない」

「…本当ですか？」

「………」


律子は恐る恐る相沢の前に回り、ひざまづいてそっと額に手を当ててみた。