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海鳴り
第6章 海鳴り
呼吸は早くなり、背中からの熱が律子に伝わってくる。


「…相沢さん、相沢さん…」

「………」

「ちょっとキッチンで氷を取ってきます」


律子は相沢から離れて布団を掛け直し、キッチンへ行ってみた。

冷蔵庫を見つけ、氷を大きなボールに入れて水を足す。

勝手のわからない他人のキッチンで、スポーツドリンクをグラスに注ぎ、清潔そうなタオルを見つけるとボールに入れた。


「相沢さん、水分取りましょう」


律子は相沢の背中を支えてスポーツドリンクを飲ませた。


「…すまねぇな…」

「いいんです」


相沢をゆっくりと横たえると、律子は氷水でタオルを絞って相沢の額に乗せた。


「…あぁ……、ありがとう…」


薄く目を開けて相沢が律子を見た。


「いいんです」

「少し寝る…」

「はい、おやすみなさい」

「………」


律子はタオルが熱くなるとにひっくり返し、また熱くなると氷水で冷やしては額に当てた。

相沢の傍らに座り、眠りに落ちた相沢の首筋に滲む汗を拭う。

冷たくなった自分の手のひらで相沢の頬に触れる。

雨は勢いを増しながら閃光と共に窓を叩き、律子は一人で雷鳴と風の音を聴いた。


怖くなかった。




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