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海鳴り
第6章 海鳴り
この人は
どんな風に生きてきたのだろうか…


律子は相沢の浅黒い顔を見つめながら、武を見つめる時の優しい笑顔を思い出した。

家の修理や刺身の差し入れ、直也の無礼に対する謝罪、山のように買ってきたお菓子、『アザミ』での事、花まる、肩車……

どれもすべてが優しさだった。



単純
堅物


好き…


背中が冷えて寒くなってきた。

呼吸が落ち着いてきた相沢の様子を見ながらまたタオルを濡らして額を押さえ、そっと布団に入った。

相沢の熱が、冷えきった律子の躰を温める。


「…っ…」


部屋の小さな灯りが消え暗闇が外の騒ぎをより際立たせる。


「……」


律子はそっと手を伸ばし相沢の手を探った。

二人の間で手を繋ぐ。

節くれだった分厚く大きな手の中で、律子の手は熱を帯び、深い安心感に包まれた。

律子は眠りに落ちた。

相沢の手が、律子の小さな手をそっと握りしめた。



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